クリスティアン・ツィメルマン
プロフィール
名前 | クリスティアン・ツィメルマン |
生年月日 | 1956年12月5日 |
出身 | ポーランド |
受賞歴 | 1975年ショパンコンクール優勝 |
史上最年少(当時)でショパンコンクール優勝
クリスティアン・ツィメルマンは、1975年に開催されたショパンコンクールの優勝者です。
ポリーニ、アルゲリッチなど超一流ピアニストを輩出したことでも有名な国際コンクール。
優勝したのはツィメルマンが18歳のときであり、史上最年少(当時)での優勝となりました。
歴代のショパンコンクール優勝者の中には、優勝時がピークになってしまい、期待していたほどの活躍を見せられなかったピアニストも少なくありません。
一方で、ツィメルマンは優勝後も着実に自己研鑽を積み、現代最高のピアニストの一人として数えられるほどになりました。
演奏への異様なこだわり
ツィメルマンのピアノ演奏への情熱は、他のピアニストに類を見ないほどです。
後述しますが、ツィメルマンの演奏は完璧すぎることで知られています。テクニックの高さは言うまでもなく、音量、ペダルの使い方、細かなアーティキュレーションまで、全て計算した上で演奏しているかのようです。
これだけでも演奏の完璧さが垣間見えますが、ツィメルマンの演奏へのこだわりは演奏技術にとどまりません。
- ピアノという楽器自体、音響、録音への造詣が深い
- リサイタルを行うときは、ピアノも同伴して持ち込む
- 納得した録音のみを発売する
東京に自宅を構えるほどの親日家
ツィメルマンは日本が大好きなことでも知られています。
1978年に日本でのデビューを飾ってから現在まで、日本ではなんと270公演以上も演奏しています。
当ブログ管理人の肌感覚でも、1〜2年に1回くらいは東京で公演していると思います。東京以外の各都市も回ることがほとんどなので、世界的なピアニストであるにもかかわらず、生演奏を聴きに行くことはそこまで難しくないはずです。
また、ツィメルマンは東京に自宅を所有していることも有名です。街を歩いていたらたまたまツィメルマンと遭遇、なんてことがあるととても嬉しいのですが、そこまで簡単には見つかりませんよね……。
ツィメルマンの演奏の特徴
これ以上が想像できないような完璧な演奏
ツィメルマンの演奏を形容する言葉を聞いたとすれば、10人中少なくとも8人くらいは「完璧」と答えるでしょう。それほどまでにツィメルマンの演奏は完璧だという印象が大きいです。
ツィメルマンの演奏に完璧さを感じる要因としては、
- 高度すぎる演奏技術
- 細部まで分析された演奏解釈
があるでしょう。芸術に完璧という言葉が存在しないことは重々承知の上ですが、ツィメルマン以上の完璧さを持つ演奏は、将来生まれないだろうと思ってしまいます。
演奏の完璧さには賛否両論
ツィメルマンの演奏の最大の特徴は完璧さですが、完璧を極めすぎると批判も生じてしまいます。
- 内容が濃すぎて聴き疲れする
- 緊張感が常に途切れない
- 肩肘張らずに演奏してほしい
これらは至極もっともな感想だと私も思います。ツィメルマンの演奏をぶっ通しで聴き続けたら、確実に胃もたれするでしょう。
しかし、ツィメルマンの演奏では、どんな細かい表現をとっても、それがツィメルマンが導いた解釈なのだという強い説得力があります。曲の真価を最大限に引き出したという意味で、ツィメルマンの録音は後世に残るべきだと思いますし、一聴の価値は十分にあります、
ツィメルマンのおすすめCD
①ショパン:4つのバラード、幻想曲、舟歌
まずは、ショパン作曲のバラード、幻想曲、舟歌です。
この録音はショパン演奏史に残るような名盤で、ツィメルマンの完璧主義が随所に現れている演奏になります。
ショパンのバラード4曲は演奏機会が多い人気曲ですが、ツィメルマンの録音はバラードの優雅さ、憂鬱さを鮮やかに表現しています。
また、幻想曲、舟歌も、バラードに劣らないほどの完成度です。特に、舟歌の真の魅力を引き出したのは、ツィメルマンの演奏が初めてではないかと思います。
②ショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番
ショパン作曲のピアノ協奏曲も、ツィメルマンの録音としては外せません。
ツィメルマンのバックで演奏しているのはポーランド祝祭管弦楽団ですが、このオーケストラは本録音のためだけに編成されています。
つまり、ツィメルマンはオケまでも自分好みに調整し、ショパンピアノ協奏曲の録音に臨んだというわけです。通常であれば世界的に有名なオケを呼ぶことがほとんどですが、オケを1から編成するほどに音楽に対する情熱が並々ならぬものだと感じます。
オケまでもツィメルマン色が表れているため、非常に濃厚な録音です。欠点は濃厚すぎて聴き疲れることくらいでしょうか。ショパン演奏史に残るくらいの圧倒的な録音です。
③ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番、第2番
ショパン以外の録音として、ラフマニノフ作曲のピアノ協奏曲も挙げましょう。
ツィメルマンといえば、
- ショパンと同じポーランド出身
- ショパンコンクール優勝
- バラード集、ピアノ協奏曲などショパンの名盤を録音
というように、ショパンと結びつきやすい演奏家ではあります。しかし、ツィメルマンがショパン弾きに留まらないことは、これまでのツィメルマンの演奏活動が証明しています。
数ある作曲家の中でも、今回はツィメルマンが弾くラフマニノフを紹介します。ラフマニノフの曲を演奏するにはかなり高度なテクニックが必要ですが、ツィメルマンの演奏技術は十分にあるので安心して聴けます。
ツィメルマンの録音の全体的な傾向として、オケよりもピアノの存在感が強いことが挙げられ、本録音でもそれは否めません。
しかし、ツィメルマンの演奏はスケールが大きいことも相まって、本録音を聴いていると、ロシアの広大な大地が思い起こされます。甘美な旋律もツィメルマンらしくロマンティックに演奏しているため、ラフマニノフのピアノ協奏曲としては一種の理想的な演奏だといえるでしょう。