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【名盤5選】ブレハッチはどんな演奏をするピアニスト?

目次

ラファウ・ブレハッチ

プロフィール

名前ラファウ・ブレハッチ
生年月日1985年6月30日
出身ポーランド
受賞歴2003年浜松国際ピアノコンクール最高位
2005年ショパンコンクール優勝
ショパン:ポロネーズ第6番「英雄」

2005年ショパンコンクールで圧倒的な優勝

ブレハッチの名を世界中に轟かせたキッカケは、2005年ショパンコンクールでの優勝です。

ショパンコンクール

ポリーニ、アルゲリッチ、ツィメルマンなど超一流ピアニストを輩出したことでも有名な国際コンクール。

国際的に相当権威があるコンクールなので、優勝するだけでも凄いのですが、ブレハッチはコンクール史上最も異次元の優勝を飾ってしまいました……。

  • 2位なしの1位(当時3位のピアニスト、ブレハッチの間にはかなり差があったということ)
  • マズルカ賞ポロネーズ賞コンチェルト賞ソナタ賞といった副賞を受賞

コンクール時の映像や録音を見るとわかりますが、ブレハッチの演奏後にはとんでもない歓声や拍手が沸き起こっていました。結果発表前からブレハッチの優勝は誰の目にも明らかだったでしょう。ところが、ただの優勝ではなく、2位なしの1位、副賞を総ナメにしてしまいました。

ワルシャワ市がグランドピアノを貸与

ブレハッチには有名なエピソードがあります。

ショパンコンクール前にブレハッチは浜松国際ピアノコンクールに出場したのですが、出場前までは自宅の練習でアップライトピアノを使っていました。プロのピアニストを目指す人の自宅にはグランドピアノが置かれているのがほとんどですが、ブレハッチはずっとアップライトピアノで練習してきたようです。

このことを聞いたワルシャワ市は、ブレハッチに市のグランドピアノを貸し出しました。ブレハッチは浜松国際ピアノコンクールで最高位を受賞し、その賞金で自分のグランドピアノをやっと買えたのです。

ブレハッチの演奏の特徴

現代のショパン弾きとしては最高レベル

ブレハッチの得意としているレパートリーは様々ありますが、やはり聴衆が最も評価するのがショパンです。

他のピアニストがショパンを演奏すると、あま〜く歌ったり、ルバートを積極的にかけたりして表現することが多いです。過度な表現をすればショパンの本質から離れてしまい、だからこそショパンを弾くのは難しいと言われています。

ところが、ブレハッチのショパンはどちらかといえばアッサリした演奏です。

  • 演奏のテンポは速め
  • ペダルを多用しない
  • 顔芸も控えめ(重要)

それでも、ブレハッチの演奏がショパンの本質を捉えていると感じられるのにはワケがあります。

作曲家の意図が第一の演奏

ブレハッチの演奏のポイントは、ピアニスト自身ではなく作曲家の意図を尊重していることだと思います。

ブレハッチの演奏はアッサリしていて、没個性的にも感じられるようですが、じっくり聴くとかなり研究した演奏だとわかります。

  • 和音の響き・和声的なセンス
  • 対位法への理解
  • ペダルの使い方

これだけの技術力がありながら、技巧を感じさせない演奏をしているのは、まさに驚嘆すべきピアニストです。

楽譜から作曲家のメッセージを読み取り、その意図をピアノにのせて演奏することに誠実に取り組んでいるのだと感心させられます。

大曲の演奏はこれからに期待

ブレハッチは、純粋で上品な演奏をすることが強みなので、小品の演奏は特に長けています。ショパンの小品を弾かせれば、ブレハッチほど上手く弾けるピアニストは皆無といってよいと思います。

一方で、大曲の演奏ではスケールの小ささを感じることが多いです。これには次の理由があると考えます。

  • フォルテの豪快さが足りない

ブレハッチは弱音美に長けている一方、演奏の迫力が足りない印象です。

そのため、迫力が求められる大曲、リストやベートーヴェンの曲はあまり合わないのかもしれません。特に、リストのピアノソナタは歴代の名ピアニストがこぞって録音している分、ブレハッチは録音するのかどうか気になります。

とはいえ、ブレハッチの演奏の完成度は非常に高く、名ピアニストになる可能性を秘めていることは間違いないでしょう

ブレハッチのおすすめCD

①ショパン名演集

2005年ショパンコンクールでの演奏のライブ録音です。

ピアノのコンクールでは最高峰であり、出場者はかなり緊張すると思われますが、ブレハッチの演奏はコンクールだということを感じさせません。ショパンの繊細さを聴かせたかと思えば、力強くみずみずしい演奏をして、ショパンコンクール圧倒的優勝の実力は伊達ではないことがわかります。

ブレハッチの原点ともいえる演奏は、ぜひ聴いておくべきです。

入手しづらいCDですが、図書館に所蔵されていたり、ブレハッチのリサイタルで販売していたりします。ストリーミングでは残念ながら聴けないと思いますが、一聴する価値はあるため、がんばって探してください!

②ショパン:前奏曲集

ブレハッチがショパンコンクール優勝後にリリースしたCDの第1弾です。

演奏技巧だけでなく、若くしてショパンの音楽の本質に迫りつつあることを実感させられる録音です。ショパンの前奏曲の録音の中では、これがダントツの録音だと思います。

③ショパン:ポロネーズ集

前奏曲、協奏曲の次に出たショパンの録音はポロネーズでした。ブレハッチがかなりの頻度で演奏している英雄ポロネーズを含めた、全7曲のポロネーズが収録されています。

特に、幻想ポロネーズのまとめ方は圧巻です。音楽の友という雑誌内の企画で、ショパンの好きな曲のアンケートをとった際に、ブレハッチは幻想ポロネーズを選んだようです。幻想ポロネーズのリサイタルでの演奏機会も多いようですし、ブレハッチにとって大切なレパートリーなのだと思います。

④バッハ・リサイタル

J.S.バッハの作品を録音したCDです。

ブレハッチは元々オルガンに興味を持ち、その後ピアノを習い始めたそうです。そのため、ブレハッチにとってバッハは音楽人生の原点といえる作曲家でしょう。

バッハは現代のピアノではなくチェンバロという楽器で作曲したため、バッハをピアノで弾く際はチェンバロの音のイメージで弾くのが大切だと一般には言われています。チェンバロは音がすぐに減衰し、強弱もそこまでつかない楽器であるため、ピアノで弾く際にはそれを踏まえた演奏がポイントになります。

ところが、ブレハッチは現代のピアノの特徴も活用しながら、バッハを演奏しています。それでいて、従来のバッハ演奏の特徴も引き継いでいるため、斬新です。

  • 強弱をかなりつけている
  • ペダルはあまり使わず、指でレガートしている

⑤ショパン:ピアノソナタ第2番・第3番他

ショパンのピアノソナタ2曲に加え、ノクターンOp.48-2と舟歌を録音したCDです。

ショパンのソナタはリサイタルで取り上げられることは多いものの、録音に踏み込まないピアニストも多いです。実際、ツィメルマンはソナタをリサイタルで演奏するものの、録音に関しては注意深く、未だ発売されていません。その意味では、ポリーニの録音が決定盤だと考えていました。

ですが、今はブレハッチのこの録音を決定盤に推したいと思います。

ピアノソナタ2番については、文句なしで素晴らしい録音だと思います。特に第4楽章の声部の処理は素晴らしいです。ピアノソナタ3番は、第4楽章にしばしばタメがあることが気になりますが、それを除けばやはり決定盤にふさわしいでしょう。

舟歌はショパンコンクールのときから素晴らしい演奏でしたが、ノクターンOp.48-2の完成度には脱帽です。ここまで聴かせる演奏ができるのは、今やブレハッチだけではないでしょうか。ブレハッチにはぜひノクターン全集を収録してほしいです。

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