マウリツィオ・ポリーニ
プロフィール
名前 | マウリツィオ・ポリーニ |
生年月日 | 1942年1月5日 |
出身 | イタリア |
受賞歴 | 1960年ショパンコンクール優勝 |
1960年ショパンコンクールで満場一致の優勝
ポリーニは1960年に開催されたショパンコンクールでその名を世界に知らしめました。
アルゲリッチ、ツィメルマンなど超一流ピアニストを輩出したことでも有名な国際コンクール。
審査委員長を努めたのは、ショパン弾きとして当時最も優れていたピアニストのアルトゥール・ルービンシュタインでした。ポリーニは、ルービンシュタインに「ここにいる審査員の誰よりも上手い」と絶賛されています。
優勝後は演奏活動から遠ざかる
ショパンコンクール優勝によってポリーニは大きく注目されることになりますが、ポリーニは大々的な演奏活動を行いませんでした。
その理由は、自身の演奏はまだ未熟であり、さらに研鑽を積む必要があると考えていたという説が有力視されています。
優勝後10年ほどは演奏活動を抑えていたポリーニですが、ついにその沈黙を破ります。録音を発売して以降、ポリーニは名盤を連発することになります。
ポリーニの演奏の特徴
現代ピアニストでは最高レベルの技術(だった)
過去のピアニストに比べると、近年のピアニストは全体的に技巧に長けていますが、この潮流の先駆けになったのはポリーニでしょう。
ポリーニの演奏は「機械的」「冷たい」と評されることが多いですが、これはポリーニの卓越した演奏技巧を指す言葉でしょう。
ショパンの練習曲、ベートヴェンの後期ピアノソナタといった難曲でさえ、ポリーニはたやすく弾いているかのように聴こえます。
「技術があるだけで詩情に欠けた演奏だ」という意見もありますが、あながち間違った意見ではないと思います。ですが、楽譜に忠実な演奏スタイルは、曲が本来持っている魅力を最大限に引き出すという点では、高度な音楽性を兼ね備えています。
大理石のように研ぎ澄まされた硬質な音色(だった)
ポリーニは技術力もさることながら、音色が硬質であることにも特徴があります。
端的に言えば「冷たい」音色となってしまいますが、曲によっては冷たい音色がマッチして高い演奏効果を発揮しています。特に、ポリーニの弾くベートーヴェンは天才的な演奏だと思っています。
ポリーニの演奏は、色彩豊かで天才的なひらめきを持つものではないでしょう。しかし、細部まで写実的に構成され、1点の曇りも妥協しないような演奏に、聴衆は魅了されていました。
1990年代から演奏スタイルが大きく変化
技巧派として不動の地位を築いたポリーニですが、1990年頃を境に演奏スタイルが大きく変化します。
1990年以前の録音を聴いてみると
- 冷徹な演奏
- 技術的に最高レベルの演奏
という印象が持てますが、1990年以降になると
- 詩情に満ちている演奏を目指したような演奏
- 演奏のキズは気にしない、大胆な演奏
に変化したことがわかります。ポリーニはイタリア人であるから、イタリア的な個性が演奏に現れたのではないかと考えられますが、それにしても急激に変化しすぎです。
もちろん、この変化はポリーニの演奏が円熟してきたと好意的に解釈することもできるでしょう。しかし、以前のポリーニの演奏が聴けなくなったことに落胆した方も少なくないはずです。
ポリーニのおすすめCD
①ベートーヴェン:後期ピアノ・ソナタ集
ベートーヴェンのピアノソナタは大きく分けると3つに分類されます。
- 初期ピアノソナタ
- 中期ピアノソナタ
- 後期ピアノソナタ
円熟を増すとともに表現も難解になることから、一般的には後期ピアノソナタの方が遥かに難しいと言われます。しかし、ポリーニは最初から後期ピアノソナタの録音に挑みます。
しかも、ポリーニの技術力もさることながら、構成力をも見せつけた名盤です。
その手腕がいかんなく発揮されているのが、第29番「ハンマークラヴィーア」です。特に、第4楽章のポリフォニーのまとめ方で、技術的にポリーニに敵う演奏はないと思います。
②ショパン:練習曲集
ポリーニの演奏史を語る上で外せない録音が、ショパンの練習曲集です。
練習曲として高い技術力を見せつけるとともに、ショパンの意図から逸脱しすぎない演奏は、後世に残り続けるであろう名盤です。ピアノ愛好家なら、必聴のアルバムであることは間違いないでしょう。
③ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17、21、26番
ベートーヴェンによる中期ピアノソナタの録音です。ポリーニの弾くベートーヴェンは本当に天才的だと思います。
- 第17番「テンペスト」
- 第21番「ワルトシュタイン」
- 第25番(この曲はピアノ初心者も弾きやすいです)
- 第26番「告別」
といった、ベートーヴェンのソナタの中でも人気曲が収録されています。